JCDデザインアワード2012

昨日はJCDデザインアワード2012の公開審査に行ってきました。
審査員は、浅子佳英、飯島直樹、五十嵐太郎、小坂 竜、中村拓志、橋本夕紀夫、平林奈緒美
今年の応募作品の特徴は、中国などの海外からの応募が増えた事でしょう。それらの作品にも、ぼくはいくつか投票したし、他の審査員も投票してはいたのですが、票が割れてしまい今年は上位には残りませんでした。審査は実際の空間を見て行われるのではなく、パネルだけしか判断の材料がないので、このような結果になりましたが、実物を見ての審査なら変わったような気がします。
また、予算も少なく、小さくてその分非常に工夫の凝らされたハイコンテクストな日本の作品と、規模も予算も大きく派手で、ある意味分かりやすい海外の作品という風に、この二つにははっきりとした差が見られます。これは他の分野についてもいえることですが、あまりハイコンテクストになりすぎると、どうしても少ない人だけにしか分からなくなり、そのジャンル自体が閉鎖的になってしまうので、どこかでこの差については考えないといけないと思いました。


さて、実際の審査についてですが、テーブルの上に並べられた作品のパネルに、各審査員が投票するような形で付箋を貼り、得票数によって上位入選作が選ばれるという仕組みになっています。ただ、今年の応募作品はどれも良くできてはいるものの、飛び抜けた物はなく、審査は非常に悩みました。これは他の審査員の方々も同様だったようです。
ぼくが最初から強く押したいと思った作品は、「荻原精肉店」「青山見本帖」「まちの保育園」「colissimo」「公文式という建築」「りくカフェ」「Tokyo's Tokyo」「Sneakerology」。特に「colissimo」はビジュアル的には抜けていた様に思っていました。

ただ、一回目の審査で「Sneakerology」「りくカフェ」「青山見本帖」は残念ながら選ばれませんでした。そこで選ばれなかった3作品についてぼくが選んだ理由を書くと、
「Sneakerology」はアーカイブインターフェイスというネット的で現代な問題に空間できちんと答えていると理由で。
「りくカフェ」はやはり、震災関連でもひとつ選びたかったのと、流行の家型なのだけど、そのかわいらしい住宅のような雰囲気がこのプロジェクトにはふさわしいように思えたから。
そして「青山見本帖」は場所を変えてのリニューアルした店舗なのですが、プランや素材はまったく違うにも関わらず、以前のインテリアの雰囲気を色濃く残し、「記憶の継承」というものに取り組んでいる様に思えたから選びました。また、見やすくなった照明や中央に置かれたガラスケースによって張り紙等が出来ない(壁は全て引き出しで出来ているため)ことにも真摯に取り組んでいるのも選んだポイントです。
この張り紙問題は、よくできた空間を、いや、よくできた空間こそ容赦なくぶっ壊す、かなり根深い問題だと思っているのですがそれはまた別の機会に。



さて、二回目の投票の結果、選ばれたのは見事に癒し系とでもいうような作品達になりました。これは「しろくちいさく透明なセカイ」で書いたように、昨今の流れの中にあるので必然だとは思うのですが、実際に他の審査委員の方々と投票で決めたのにも関わらず、このような結果になったのは面白かったです。

しかし、金賞を選ぶ所になって、票は割れてしまい一回目の投票では決まりませんでした。そこで、このままなんとなく機械的に付箋を貼って決めて行くことに疑問があったので、一作品に一票ではなく、二票まで入れられる様に投票の仕組みを変えることを提案し、再度投票を行い、金賞の6作品までは決まりました。このあたりで議論も随分白熱し、淡々と付箋を貼って選ばれる仕組みそのものが変わったので、審査員として役割は果たせかと思います。

しかし、最後の大賞の投票でも票は割れ、「荻原精肉店」「colissimo」「公文式という建築」「夢尋蔵」がそれぞれ得票される結果に。
そして、議論を続けているうちに、だんだんと議論の流れが「荻原精肉店」に傾いて行きました。しかし、この「荻原精肉店」は以前に金賞を取った作品にその雰囲気が似ている事、またプレゼンの写真に味のあるおじさん(店主だと思うのですが未確認)が写っているのがビジュアル的に非常に効いているので、ぼくとしては、できれば金賞には選びたくありませんでした。商空間を選ぶ賞なのに、店主が良いという理由で大賞が選ばれるのなら、空間を否定しているように思えるからです。
そこで、プレゼンテーションはいまいちだけど、プライベートな空間とパブリックスペースを上手くレイヤー状に配置し、セキュリティに配慮しつつも街に開けたオープンな空間をつくりだせているという、その巧みな空間構成や、ゲーティッドにならない空間をつくり出せているという社会的意義などの理由で「まちの保育園」を押し、最終的には中村さん、五十嵐さんも投票し、最後に大賞は「まちの保育園」に決まりました。
最後の最後まで議論は続いたので、その意味でも今回の審査にでて非常に良かったです。見て頂いたみなさんありがとうございました。
しかし、最初から押していたのにも関わらず勝てなかったので、「colissimo」には申し訳ない。。せっかくなので上位のいくつかは実際に見に行きたいと思っています。ではでは。