鶴ヶ島プロジェクトシンポジウム

先週の9月14日、鶴ヶ島プロジェクトシンポジウム「公共建築から鶴ヶ島の将来像を考える」に行ってきました。


市役所の一階ロビーで、市長が登壇して行われる建築のシンポジウムというのは初めての経験。
パネリストは鶴ヶ島市長の藤縄善朗さん、経済学者の根本祐二さん、そして建築家の工藤和美さんと藤村龍至さんの4人。全体は、最初に根本さんのプレゼンがあり、その後、藤村さんのほうから「鶴ヶ島プロジェクト」のプレゼンがあって、さらに市長、工藤さんからコメントがあって最後に質疑応答といった内容。


ともかく、この日はなんといっても最初の根本さんのプレゼンが素晴らしかった。

根本さんの話をざっくりと要約すると、
橋や道路、そして公共の建築物といったインフラは、ある時期に集中して建てられており、しかも現在耐用年数に近づいているため、今後大規模な修繕や補修、そして建て替えが必要になる。しかも、今後は急速に高齢化し、さらに昔と違って金もない……さて、ではどうすれば、、という極めて普遍的かつ今後の日本については重要なもの。
実際の事例も紹介しながら話していくので、説得力があるし、なにより面白い。
特に図書館の話はなるほどーと唸ってしまったので紹介すると、


図書館の運営費は一冊貸し出すにつき1000円かかる。
普通に考えてこれは随分高い。だって、今、ツタヤのDVDのレンタルは旧作なんて1週間100円。GEOならなんと80円。という訳で、この金額の話をすると、大抵はそこまで高いなら図書館自体そもそもいらないか、、って話になるそうだ。
ただ、これは建物から本まで、すべて揃えたら、という話で、建物を既存のものを使用したり、本もどこかから譲り受けたりすれば、金額はグラデーションで下がっていく。とはいえ、作るからにはゼロになることはなく、一冊あたり500円あたりがだいたい底値。しかも最初に書いた1000円のうち、本の購入費は10%ほど。これを聞くと確かに全国津々浦々にまで図書館が必要なのかと思ってしまう。
そもそも、実際に図書館に行き、ベストセラーの貸し出しの予約数を見ていると(カウンターに貼り出されていたりするのです)100を超えているものもあって、こりゃ買ってくれよ、って本当に思う。根本さんも出版不況の原因のひとつが、この本の貸し出しによるものなんじゃないかと言っていましたが、出版不況が本当に図書館のせいなのかどうかはともかくとして、図書館はある程度民間のサービスに移行するしかないような気がします(最近ツタヤが実際始めてますね)。いや、個人的には図書館は大好きでよく利用……というか入り浸っているので、残して欲しいんですが、まあ仕方なかろうと。


ちょっと話がずれましたが、ここで重要なのは、作るか作らないかという二項対立で考えるのではなく、その間の具体的な対案を出し、さらに周辺の市町村の設備も利用するなどして、もうちょっと上手くマネジメントしていこうよ、という話です。


ともかく、まず、物理的な構築物である以上、すべてのインフラは朽ちる。
そして、公共投資はかつての半分になっている。なぜなら社会保障費が増えてきているのでやむを得ず減らしてるから。
次に、補修ができず、危険なために通行止めになっている橋が現在1900もある。また、古い学校の横に新しい文化ホールが地方でボコボコと建てられる。なぜなら票に結びつくから。
しかし、利用時間や運営の方法を変えるなどすれば、新しく建てるよりは不便にはなるが、本当に必要なものはきちんと手に入れて、しかも道路や上下水道を補修し、メンテナンスしつつ、うまく回せる方法もあるんだよ、という話は聞いていて勇気づけれれました。

また、昔は公共施設のひとりあたりの面積は大きいほうが、良いサービスを受けられる良い市町村だと思われていた。しかし、今後は他の隣接した市町村の施設を共同利用し、一人当たりの面積が小さい市町村のほうが、借金が少なくなり、結果的に良いサービスが受けられるようになるかもしれない、という話にも納得。



そして、肝心の鶴ヶ島プロジェクトに関してですが、、ぼく自身が展覧会をきちんと見れておらず、全容をきちんと把握していないため、ここでは割愛します。すみません。
というより、鶴ヶ島プロジェクトの展覧会はなんと、12月の3日から7日まで、渋谷のヒカリエに巡回してくるのでその時に。
さらに、本日、22日、西武池袋本店別館9階にて、西田亮介さん×藤村龍至さん×速水健朗さんトークイベント 「新しい日本を設計する」〜『日本2.0 思想地図βVOL.3』(ゲンロン)刊行記念が行われるので、鶴ヶ島の話もあるんじゃないかと。こちらもぜひ!


最後に。
これは鶴ヶ島に限ったことではなく、地方、都心、両方に言えることですが、駅前の一等地にはパチンコ屋があって、市役所はバスで行かなければならない不便な場所にあるというのは、場所によってはそろそろ変えてもいいんじゃないですかね。もちろん地価が高騰している時はそれで良かったんだろうけど、縮小して行く段階では、むしろ集中して利便性を上げたほうが周辺との差別化もできるのだし。
特に今回のシンポジウムなどはふらっと来た人が見える環境だともっと良かったと思うので。
ではまた。